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どうも、音大生のこうきです。今回はベートーヴェンの遺した「新約聖書」とも呼ばれる32曲のソナタから、発表会にオススメな作品を10曲解説をしてみました。ニックネームが付いた作品が良い作品ではないので、ご注意!ワルトシュタインの邦訳、分かりますか?ベートーヴェン自身が名付けた作品は何と1曲だけなんですよ!
目次
第3番ハ長調Op.2-3
ベートーヴェンが最初に出版したソナタは、3曲セット(Op.2-1.2.3)でした。その中でも2.3番がオススメですが、今回は第3番をご紹介いたします。というのも、第3番の方が真っ当なテクニックを使用して且つ聴き映えがするから。
第1楽章の冒頭は超難しいです。静止した状態からの素早い3度は、とても緊張します。またコーダのオクターブのパッセージも結構大変です。第4楽章は和音の上行型に始まり、走句を駆使した技巧的な作品でしょう。
第7番ニ長調Op.10-3
こちらも3曲(Op.10-1.2.3)セットで出版された作品のうちの3曲目です。ベートーヴェンの3曲目は優れているのですかね?(ピアノ協奏曲は優れているけど交響曲はどうだろう…ブラームスの3番の交響曲もカラヤンはあまりやらなかったみたいだし)
ベートーヴェンはたまに人を食ったテクニックを使います。3番のソナタ同様、冒頭のテクニックがかなり異質なものになっています。結構厄介だし、不得意な人はとことん不得意なので、素直に諦めて違う曲を演奏しましょう。
第8番ハ短調「悲愴」Op.13
ベートーヴェンのソナタって3大とか4大とかありますけど、それらは結局名前のついたソナタのことを言っているだけで、優れたソナタを指している訳ではないのです。このソナタはたしかに優れていますが、絶品といえるかどうかは疑問に思います。
特に第2楽章が有名ですから、抜粋して演奏するのも良いでしょう。第3楽章は比較的軽い楽章なので、2.3楽章セットで演奏するのも良いでしょう。第1楽章はちょっと問題を孕んだ楽章ですが、映える点では申し分ありません。
第13番変ホ長調Op.27-1
「月光」の裏に隠された名曲です。非常に小さいソナタながら内容の詰まっている作品で、ベートーヴェンの様式がよくわかるソナタです。特に第3楽章は、ブラームスに通ずる雰囲気を感じることができるでしょう。
しかし、この作品の難しさは「基礎力が全てバレること」にあります。ゆっくりしたパッセージほど難しいパッセージはありません。弾き飛ばせませんからね。第4楽章もごまかしが全く効かないので、怖い楽章です。
第14番嬰ハ短調「月光」Op.27-2
宇野昌磨選手が演技で使用したことで認知度が爆上がりした作品。弾き方等はこちらの記事をご覧くださいませ↓↓↓
非常に優れた作品で、そのテンポの変化は徐々に速くなっていく構造となっています。第1楽章も良いのですが、せっかくですから第3楽章に挑戦されることを強くオススメいたします。意外と弾けちゃうかもしれませんよ!!
第17番ニ短調「テンペスト」Op.31-2
ベートーヴェン先生、この作品の解釈はどういったものなのでしょうか?
…シェイクスピアのテンペストを読むと良い
というのが、この作品がテンペストと呼ばれるようになった所以です。魔法にかかるような冒頭に、直截的な第3楽章、どこを取っても優れた作品に間違いありません。
第3楽章は甘く見ていると揚げ足を取られますから、お気をつけて!
第21番ハ長調「ワルトシュタイン」Op.53
ワルトシュタイン侯爵に献呈されたとされているのが由来の「ワルトシュタイン」。「ワルト(wald)」は森、「シュタイン(stein)」は石を意味しますので、邦訳すれば「森石」となります。嘘ですよ。
最初の連打は、ベートーヴェンの時代のピアノの進展が伺えます。この作品を書いていた時代に、このような連打が可能なピアノが開発されたからです。この時代の作品は音域を最大限に使うのが常だったので、作品で当時のピアノの最大音域が分かります。
第23番ヘ短調「熱情」Op.57
ただ「appasionato」と書かれただけで「熱情」と付けられてしまった作品。ニックネームを付けることで有名になる作品も多いですが、ただニックネームが付いているからいい作品と決めつけるのも問題のあることです。
この作品で弾きやすいのは第3楽章…と言いたいところですが、第1楽章とどっこいどっこいともいえます。第3楽章は短く、第1楽章は長い、でも第3楽章は超難しいけど、第1楽章は実はそんなに難しくありません。体力がある方は第1楽章ですかね。
第26番変ホ長調「告別」Op.81a
ベートーヴェンが唯一名前を付けたソナタです。「Lebewohl(さようなら)」と冒頭に、歌詞のように付けられています。ホルン5度から始まる作品。もう冒頭の情報量が凄まじすぎて私には演奏することができません…。
和音のパッセージが少し難しいのですが、ここは気合です。いいえ、和音のパッセージは指の感覚が必要なのです。こちらに関しては、こちらの記事をご参照くださいませませ。
第28番イ長調Op.101
唯一入れました、後期の5作品。発表会で演奏するには28番が限界です。昨今のコンクールでは若い方々が後期のソナタを弾いていますが、私は疑問に思います。あまりにシンプルに書かれた作品の中にベートーヴェンの精神性を見出すことが、本当に出来ているのでしょうか?
この作品であれば、何とか理解することが可能なように思います。喜びに満ちた作品で、特に第2楽章のリズムが作品にキレをもたらしています。冒頭の主題の情報量はそれはとんでもないのですが、1度だけ完璧に上手くいった例を知っています。
まとめ
ベートーヴェンのソナタは「新約聖書」と言われています。どれも優れた作品で、超すぐれた作品でもあり、もう極上の作品たちがそろっています。
- 1 第3番ハ長調Op.2-3
- 2 第7番ニ長調Op.10-3
- 3 第8番ハ短調「悲愴」Op.13
- 4 第13番変ホ長調Op.27-1
- 5 第14番嬰ハ短調「月光」Op.27-2
- 6 第17番ニ短調「テンペスト」Op.31-2
- 7 第21番ハ長調「ワルトシュタイン」Op.53
- 8 第23番ヘ短調「熱情」Op.57
- 9 第26番変ホ長調「告別」Op.81a
- 10 第28番イ長調Op.101
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