【ショパン】音大生が解説「幻想即興曲」の弾き方

ショパン
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どうも、音大生のこうきです。本日はピアノ弾きの最初の目標であるショパンの「幻想即興曲」について解説していきます。

目次

ショパン作曲「幻想即興曲」について

ショパン国際コンクールで第2位とソナタ賞を受賞した Charles Richard-Hamelin (シャルル=リシャール アムラン)の演奏

幻想即興曲は燃やされるはずだった

今ではショパンの代名詞ともいえる「幻想即興曲」ですが、実はショパンはこの作品を燃やす予定だったのです。

というのもショパンは完璧主義者で、中途半端な作品や、自分で認められない作品は出版せずに棚にしまっていました。そんな中、ショパンは友人のフォンタナにこう言い残します。

僕が死んだら、この棚に入っている作品は全て燃やして捨てるように

わざわざこう言い残すほど、ショパンの駄作への対処は徹底されました。幻想即興曲も、このように棚にしまわれ、フォンタナによって焼かれていたはずなのです。

しかし、フォンタナはやりやがったのです。棚にしまってあった幻想即興曲を掘り出し、しかも書き換えて出版に踏み切ったのです。今、一般的な幻想即興曲はそのフォンタナが書き換えたバージョンなのです。

ショパンは天国でなんと言っているのでしょうか、フォンタナはやりやがったのです。

幻想即興曲は2種類ある

世紀の大ピアニスト Arthur Rubinstein (アルトゥール・ルービンシュタイン)の、ショパン本来の版の演奏。より激しくよりエモーショナルなのです。

フォンタナが書き換えてしまったバージョンが、いま一般的に出回っている幻想即興曲です。ではショパン本来の版はどこへ行ったのでしょうか?

実は、ショパンは生前にこの作品をデスト公爵夫人に献呈していたのです。ショパンはパリ、ドイツ、イギリスの3カ国で同時出版するという謎を残した人ですから、版はあちこちに散らばっているのです。

最近、そのデスト公爵夫人の版が見つかり、出版に踏み切られました。これが、幻想即興曲は2種類ある意味です。

色々なバージョンがある幻想即興曲の中間部

ショパン国際コンクール大第6位&チャイコフスキー国際コンクール第2位の Dmitry Shishkin (ドミトリー・シシキン)の演奏。中間部の装飾がよりブリリアントですね。

幻想即興曲は2種類あるとお伝えしましたが、なぜかさらにバリエーション(変奏)があるのです。ショパンはバッハを尊敬していましたから、きっと弟子それぞれに合った練習法を提示していたのでしょうね。

しかしこのブリリアントな中間部の装飾の楽譜がどうも見つからず…エキエル版の遺作集にも入っていないので、見つけた方はご連絡よろしくお願いいたします。

音大生が「幻想即興曲」を徹底解説

3:4のリズムは割り切れる

ドビュッシーの「アラベスク第1番」やこの「幻想即興曲」は割り切れないリズムがあって難しいとされていますが、きちんと割り切れるのです。下記画像をご覧下さい。

3:4のリズムは、必ず3連符の方を基準として弾きます。そうすると4連符の方は付点のリズムとなり、だれでも理解できるリズムに生まれ変わるのです。

ここで難しいのは3連符を基準にしなくてはならないことです。これだけは仕方ありませんが、皆さん3拍子の曲だって3連符だって今まで弾いてきたはずなので弾けるはずです。

このように考えれば大抵のリズムは割り切れるのです。それより11/16拍子とか、4+3+2/8拍子の方がよっぽど難しいですよ(打楽器の伴奏でやった)。

冒頭は両手で弾こう

幻想即興曲の冒頭、左手だけで弾いたらカッコいいのですが、大抵迫力に欠けます。大音量が持ち味の私でも両手で弾きます。

テクニック的にも簡単になるし、音も出るし、そもそも左手だけで弾く意味も無いので、両手で取っちゃいましょう。カッコ悪くありませんよ。

最初が1番難しい

幻想即興曲の難所は8.9小節目の訳の分からない音列です。特に9小節目が難所ですね。ショパンの指の柔らかさと天才さには驚かされるばかりです。

さて、どういう風に難しいかというと、規則性が薄いので弾きにくいのです。いいえ、規則性がないわけでは無いのですが、無いのと同じくらい訳がわからないのです。

ここが弾ければあとはそんなに難しくありません。ここが弾ければ幻想即興曲の5割をマスターしたもんです。

テクニック

ここだけ弾ければあとは弾ける

これはチャイコフスキー国際コンクール優勝のDaniil Trifonov(ダニール・トリフォノフ)の演奏。

そう、例の8.9小節目が弾ければあとは弾けるのです。なので、さっさとあの訳の分からない箇所をマスターしてしまいましょう。

この箇所が難しい理由は規則性が薄い他にもう1つあります。それは親指を越さないと弾けないことです。

ドビュッシーのエチュード「5本指のために」は難しそうに聞こえるしまぁ実際難しいのですが、1度も親指を返さずに弾けるため意外と簡単に弾くことが出来るのです。

しかしこの「幻想即興曲」は1小節に3回も親指を返さないといけないため、指が絡まりやすくなっています。支えも作りにくく、しかも本番でミスするとあとの3回もミスするといういや~な場所なのです。

意外と怖い半音階

これはドビュッシーのエチュードより「半音階のために」なぜかこの半音階は弾きやすい。

中間部の前とCodaの前にある半音階下行型。意外とミスしてしまう場所なのです。私はコンクールの本選会でこの半音階で止まりました(恥ずかし)。

1.2.3の指だけで半音階を弾いている人は良いのですが、少し疲れやすいのです。しかし4の指を用いると指が絡まって止まります。人それぞれですが、私は1.2.3の指だけで半音階を弾くことをオススメします。本番で指が絡まったら終わりですからね。

しかもここは半音階だけなので、止まったりミスしたりするととても目立ってしまうのです。

弾きやすい調で書かれている

まぁ聞いてみてよ、黒鍵の次に白鍵弾きだすから
この方はBoris Berezovsky(ボリス・べレゾフスキー)

私はよく黒鍵がある作品は弾きやすいと言っていますが、ずばりこの作品がそれに当てはまります。適度な黒鍵と白鍵のバランスなので、するすると弾くことが出来ます。

同じ嬰ハ短調でも、練習曲Op.10-4はめちゃくちゃ弾きにくいし、練習曲Op.10-5「黒鍵」は黒鍵しかないから難しいのです。ピアノは奥が深いもので…

練習法

脱力練習

「幻想即興曲」の肝は「脱力」です。脱力が出来る人であればすぐに弾けるようになってしまう面白い作品なのです。逆に力を入れてしまうと手首の自由が利かずに、硬くなってすぐに疲れてしまいます。

脱力に良いとされる練習はリズム練習です。ハノンの最初のリズム練習表を参考に練習してみてください。いつもは両手で練習することを進めていますが、これは両手でリズム練習できないので、片手ずつ弾いてくださいね。

指を伸ばして弾く

指を伸ばして弾く代表のホロヴィッツ

指を伸ばして弾くのは、意外と脱力に繋がるかも知れません。わざと支えをすべてなくし、ただ鍵盤が下がるだけの力を使って弾くのです(音も出ないくらい)。そうすると脱力の感覚がつかめ、逆に支えの感覚も養うことが出来るのです。

ショパンは指を伸ばしたり曲げたりして弾いていたと思います。「幻想即興曲」の中間部は思い切って指を伸ばして弾いてみると、あのエモい旋律が奏でられるかもしれません。

支え

幻想即興曲の中間部は支えを取ると良い音が出るのですが、細かいパッセージは1つ1つの音の支えが必要です。この際使える支え縦の支えです。

縦の支えとは、指から上腕にかけての支えです。1本のラインを意識すると上手くいくように思います。この支えは細かい音でも1つ1つの音に使えるので、非常に重宝します。

まとめ

ショパン作曲「幻想即興曲Op.66」は、冒頭の右てさえ何とか弾ければ、必ず弾くことが出来ます。あなたも憧れの1曲にちゃれんじしてみては?

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