【ベートーヴェン】音大生が解説する「ワルトシュタイン」の弾き方

ベートーヴェン
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どうも、音大生のこうきです。今回はベートーヴェン作曲「ピアノソナタ第21番ハ長調Op.53(ワルトシュタイン)」の弾き方について解説します。

ベートーヴェン作曲ソナタ第21番ハ長調Op.53 「ワルトシュタイン」について

ワルトシュタインとは人の名前

2014PTNA特級セミファイナル 山﨑 亮汰 ベートーヴェン:ピアノソナタ第21番ハ長調「ワルトシュタイン」
2014年8月18日(月)第一生命ホールで行われた特級セミファイナルでの演奏映像です。映像制作:ビデオクラシックス

ワルトシュタイン(Waldstein)は、ベートーヴェンがこの作品を献呈した人の名前です。ワルトは「森」、シュタインは「石」の意味で、直訳すると「森の石」と言う意味になります。

科学者のアインシュタインは、アインは「1つの」と言う意味を持つので、「1つの石」という意味になります。ドイツ語の名前は、このように意味を複合したものが多いです。

冒頭は馬の足音を意味している

ワルトシュタイン言えば、有名なのは冒頭の連打の主題です。この和音連打は、馬の足音を表しているとも言われます。また、汽車の音を表しているとも言われますが、当事汽車があったかはわかりません。

余談

馬の足音を表現している楽曲の有名な例はシューベルト作曲の歌曲「魔王Op.1」ですが、こちらは連打が速すぎてピアノの限界より、人間的な限界が先に来ます。

シューベルト/リスト 魔王 – Schubert/Liszt Erlkönig
アメリカで活躍する浅井純さんの演奏
こちらはリストがピアノ独奏用に編曲した版です

この主題は後にトレモロの形でできますが、どちらが正式な第1主題かはわかりません。私は、2回目のトレモロのほうが、より第1主題らしく聞こえます。皆さんはどちらの主題の方が始まりを感じられますか?

第3楽章にオクターヴグリッサンドがある

オクターヴグリッサンドとは、片方の手でオクターヴの形に開き、そのままオクターヴのままグリッサンドをすると言う手法です。これは、手のかなり大きい人しか使用することができません。

当時のピアノはとても軽かったため、少し手が大きい人であれば指の腹でできましたが、今のピアノはとても重いため、手の大きさに余裕のある人しか演奏できなくなってしまいました。

しかし安心してください。私でもオクターヴグリッサンドが必要な作品は2曲くらいしか知りません(あと何の曲だったかなぁ…)。

Krystian Zimerman advice on octave glissando
ショパンの巨匠Krystian Zimerman(クリスチャン・ツィメルマン)の演奏
この人は多分神

ベートーヴェンで2つしかないハ長調のソナタ

実は、ベートーヴェンはハ長調のソナタを2つしか書いていません。それは、第3番と、第21番ワルトシュタインです。他のピアノ曲には、ピアノ協奏曲第1番Op.16が挙げられます。

ベートーヴェンと言えばハ短調です。ベートーヴェンのハ短調の作品は悲劇的で、人々の心を無理矢理悲しみに突き落とします。バッハのハ短調の曲はどこか他人事で、上部な感じがするので、ベートーヴェンのハ短調の力は凄まじいものとなっています。

PTNA2014コンペ全国決勝/Jr.G級 金賞 谷昂登 ベートーヴェン/ピアノソナタ第3番 ハ長調 Op.2-3 第1楽章
もう1つのハ長調は第3番Op.2-3です。

当時のピアノ製作技術を反映している

当時、ベートーヴェンのもとに新しいピアノがたくさん送られ、講評を求められていました。その中でエラールというピアノは、当時できなかった連打を可能にし、このワルトシュタインを生み出しました。

ベートーヴェンは音楽界の革命家だったので、このような斬新で、当時は受け入れられないような作品も作り上げました。そんなベートーヴェン後期の作品で、ちょっと脳筋のような作品があります。こちらです。

失われた小銭への怒りと言う曲名で知られている、Rondo e capriccio Op.129(奇想曲的なハンガリー風のロンド)と言う曲です。まぁいちど聞いてみてください。

BEETHOVEN – Rondo e capriccio
ピアノ界の神童Evgeny Kissin(エフゲニー・キーシン)の演奏

ベートーヴェン作曲ソナタ第21番ハ長調Op.53(ワルトシュタイン)の弾き方

第1楽章

連打は指を上げすぎない

ワルトシュタインの冒頭の連打は、鍵盤から指を上げすぎてはいけません。そうすると、音がバタバタしてしまい、余計な雑音が聞こえてしまうためです。

最初の低音のドの音はティンパニ、そこからは弦楽器のセクションだと思うと、うまくいくと思います。決して打楽器ではありませんので、気をつけてください。

コツは、上腕をうまく使うことです。手首からではなく、肘からでもなく、腕を伸ばす運動と絡めると、うまくいくので試しててください。

細かいパッセージは弾かない指の脱力を意識すること

主に提示部と再現部で現れる細かいパッセージは、弾かない指の脱力を意識して、乗り越えましょう。そうしないとだんだん力が詰まってきてしまい、良い音も出なくなってしまいます。

ここで必要なのは、聞いている指の支えです。支えている指はしっかりと支え、弾かない指はダランと脱力できるようにしましょう。これは、他の曲の細かいパッセージでも必要なことなので、ここでマスターしてしまいましょう。

第2主題の2回目は、左手にメロディーが移る

ホ長調になった第2主題の2回目は、左手にメロディーが移っていることに気が付きましたでしょうか?ここは、左手の上声部に旋律が移っています。

ここの旋律をはっきり出せる人はそういません。大体の人が右手の3連符のメロディーを歌うか、どちらも適当になってしまうことが多いです。この旋律をはっきり出すことができれば、その人はこの曲をよく理解しているとわかるでしょう。

感覚で乗り切ること

ショパンのエチュードop.10-4の記事でもいいましたが、古典的な作品は、古典的な音列になるので弾くのが大変難しくなります。この作品も、白鍵と黒鍵のバランスが難しく、大変弾きにくい作品になっています。

黒鍵の高さや白鍵の位置を指で感じながらさらってください。本番でより頼りになるのは視覚的な情報より感覚的な情報です。指先のセンサーをフルに働かせてさらってくださいね。

第2楽章

VIDEO | Tatiana Nikolayeva plays Mozart Piano Concerto n.22 K.422 – Excerpt
Tatiana Nikolayeva(タチアナ・ニコラ―エヴァ)の演奏
知名度は低いのですが、この方の音色の作り方、タッチは大変勉強になります

様々なタッチを駆使すること

第2楽章は、緩徐楽章で、とても美しい響きがします。また、音域が低音に寄っているため、倍音が多くなり響きが豊かになります。

そこで注意しなくてはならないのは、ペダルです。あまりペダルを多くしすぎると、倍音がガチャガチャになり響きが損なわれてしまいます。またより注意をしなくてはならないのは、音質です。

低音は変化が付けやすいため、変化がつきすぎてしまうことがあります。少し叩いただけでもバンと叩いた音に聞こえてしまうため、より繊細なタッチを使ってください。撫でるように弾くのも、ここでは1つの手です。

骨のタッチと筋肉のタッチ

ここで、普段私が使用している2つの感触を紹介したいと思います。名前は骨のタッチと筋肉のタッチです。

骨のタッチとは、コツンと下部雑音がすることで、硬いけれどよく響く音がします。文字通り筋肉の柔らかさと言うよりは骨の硬さを使ってタッチしている感じがします。

筋肉のタッチとは、これの質とは違い柔らかい音がします。先程言った撫でるような感触も、この筋肉のタッチに入ります。弦の響きなどに使うととても柔和な音がします。

第3楽章

左手のレガートに注意して

第3楽章は、左手のレガートが難しいです。右手のレガートはさほど難しくは無いのですが、左手になると移動も激しくなるため難しいです。また32分音符は出てくるので逆に指が重くなってしまうこともあります。

レガートの本来、同じ音質の音が連続することを意味します。つまり、そうするとなめらかな流れになるのです。ゆっくりと音質やか音色を確かめながらさらってみてください。またここでも、弾いている指以外の脱力が大事なので、支えを意識してさらってください。

指を広げっぱなしにしない

この作品は特にアルペジオが多いですが、指を広げっぱなしにすると指の筋を痛めてしまう原因になります。確かに次の鍵盤の準備をするのも大事ですが、ここで大事なのは脱力です。指を広げたままでは脱力ができません。

1つ実験をしてみましょう。皆さんはグーにして指を広げることができますか?正解はできません。通常ピアノ弾く際は指を曲げるので、その形のまま指を広げ続けると言うのは本来無理な形なのです。

指の伸縮を意識して、さらってみてください。

トリルは回数を決める

Piano masterclass on Trills, from Steinway Hall London

第3楽章のサビとも言える箇所にはトリルが使われます。このトリルは適当に入れてしまうとその他の声部が演奏不可能になってしまいます。なぜなら、トリルをしながらそのオクターヴ上の音を弾くからです。

トリルの個所では大体32分音符の音価で演奏してください。またそれでもうまくいかない場合は1個減らした3連符や、逆に1個追加した5連符などにして、トリルと同時に他の旋律を演奏しないようにしてください。つまり、トリルと旋律で1つの旋律を形成するような感じです。

オクターヴグリッサンドは10度が届く人のみ

オクターヴグリッサンドは、特別手の大きい人しかできません。9度が届くからといって出来るわけではありません。本当に特別な人だけができる手法です。

しかし、オクターヴグリッサンドができないからといって絶望することはありません。オクターヴグリッサンドができなくてもピアノは弾けます。

指遣いを工夫することによって全ての音が演奏可能になるので、自分で考えてみてください。

最後まで気を抜かない

20分以上の大曲を演奏した最後は和音の上行型があります。ここは、デュランのワルツと一緒で最後の最後に崩壊しやすい場所の1つでもあります。ここで崩壊してしまっては、今までの演奏が全て台無しになり、終わりよければ全てよしが崩れてしまいます。

ここも最後まで感覚と脱力を忘れないことによってのみ演奏可能なので、最後まで気を抜かないようにそうしてください。逆に、感覚や脱力を意識して演奏していないとここで力が溜まり演奏ができなくなってしまいます。ショパン作曲のバラード1番作品23のように最後の最後でばれてしまう作品なのでしっかりとさらってくださいね。

まとめ

ベートーヴェン作曲ピアノソナタ第21番ハ長調作品53 (ワルトシュタイン)の「ワルトシュタイン」とはこの作品が献呈された人の名前です。第3楽章にはオクターヴグリッサンドがあり、またこの曲の冒頭は低音和音連打で、当時のピアノ制作技術の発展が見受けられます。

古典的な音列のため、大変弾きにくい作品となっていますが、脱力と感覚によって乗り切ることができます。しかし、この感触と脱力ができていないと第3楽章の最後の和音の上行形で、最後に足を引きちぎられることになってしまいます。最後の最後でテクニックが全てばれてしまう恐ろしい曲です。

大曲には悪魔が取り憑いています。この作品は比較的ボロボロになる演奏を聞かないのですが、最大限注意を払って演奏してくださいね。オクターヴグリッサンドは無理しないでください。

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