【ショパン】羽生結弦選手も演技した「バラード第1番」の弾き方

ショパン
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どうも、 ピアノ部部長、音大生のこうきです。今回は世界を股にかけて活躍する羽生結弦選手も演技で使用した作品でありショパン初期の大傑作「バラード第1番Op.23」を解説していきます。

ショパン作曲「バラード第1番Op.23」について

羽生結弦選手がショートプログラムで演技した

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↑↑羽生結弦選手の「バラード第1番」の演技

日本、いや世界のフィギュア界の絶対王者、羽生結弦選手が2015-2016シーズンのショートプログラムで演技したことで有名になったこの作品。

羽生結弦選手はこのバラード第1番の短縮バージョンを演技していますが、この作品の良いところを凝縮しているので全く違和感がありません。

むしろ、この作品と羽生結弦選手の演技が相互作用を生み、1つの作品(演技)を作り上げていることに衝撃を受けました。

怪我に悩まされている羽生結弦選手ですが、今後も頑張って欲しいです。(ちなみに私も名言集を買うくらいの大ファンでして)

アニメ「四月は君の嘘」で主人公が最後に演奏した

Chopin:Ballade g-moll Op.23 Pf.Tomoki Sakata
アニメ「四月は君の嘘」の演奏吹き替えをした阪田知樹さんの演奏

このバラード第1番はアニメでも演奏されました。「四月は君の嘘」という2014年から放映されたアニメの主人公、有馬公生が最終回で演奏します。

演奏中、彼は友人(?)の宮園かをりを想起しています。すると、ヴァイオリンを持った彼女が有馬公生の心の中に出てきてヴァイオリンを弾きだします。

実は「バラード第1番」には、ヴァイオリンの作品を多く残したことで知られる「イザイ」という作曲家が残したヴァイオリンとピアノのデュオバージョンがあるのです。

有馬公生と宮園かをりはその「イザイ編」を演奏するのです。

最初の「ド」で全てが決まる「バラード第1番」

演奏を聴く側の方はあまり気にしないかもしれませんが、演奏者は最初の「ド」に命をかけるのです。

この「ド」は次に上行するためのエネルギーや曲を始める合図、またト短調と書かれているのに変イ長調で始まる特異性などの様々な意味が詰まった音なのです。

音大生がこの作品をレッスンに持っていくと、「ド」を弾いただけで教授は「もう1回。」と言い放ちます。もう1度「ド」を弾くと「もう1回。」と。3回分のレッスンはこの「ド」だけで終わります。

この「バラード第1番」を聴くときは、最初の「ド」に全神経を集中させて聴いてくださいね。

ショパン初期の作品の大傑作

Krystian Zimerman – Chopin – Ballade No. 1 in G minor, Op. 23
私にとっての神 Krystian Zimerman (クリスチャン・ツィメルマン)の演奏

この作品は確かに有名ですが、ショパンの初期の作品の中でも群を抜いて完成度の高い作品となっています。

形式の曖昧さと音楽の不安定さ、短調と長調を混ぜた書法で、聴衆の心はかき乱されます。テクニカルな場面と抒情性を兼ね備えた「バラード第1番」は大傑作と言われるでしょう。

そんな大傑作を弾くのは容易ではありません。この作品を本番で弾くと、大抵悲惨な結果になります。大傑作を弾くのは逆に、奏者に大変な負担を強いるのです。大傑作には悪魔が取り憑いています。

音大生が解説する「バラード第1番」の弾き方

テクニカルさと文学性が統合したショパンの大傑作

改めて書く必要もないかもしれないけど、この作品には悪魔が取り憑いています。「大傑作」と呼ばれる作品は大抵取り憑かれているんですよね。

テンポの変化と調性の変化により、人の心に直接訴えかけるのがこの作品の特徴です。その微妙なテンポの変化を誤ると文学性が荒み、反対にとっ散らかった作品になってしまうのです。

ピアニストでも難しいこの点を、フィギュアスケートでクリアした羽生結弦選手はやはり世界の王者でしょう。

最初の「ド」はゆっくり重さをかけて

Seong-Jin Cho – Ballade No.1 In G Minor, Op.23 (Live From The Yellow Lounge)
2015年のショパン国際コンクールの覇者Seong-Jin Cho(ソンジン・チョ)の演奏

さて、例の最初の「ド」。2オクターブあれば更に倍音が増えてそんなに意識しなくても良い音が出るのですが、1オクターブしかないのでそれはもう大変です。

コツは「ゆっくり重さをかけて」弾くことです。ゆっくりとは、打鍵のスピードです。難しいですが、大きい音を出すには3つ種類があるのです。

  • 打鍵のスピードを上げる
  • より重く弾く
  • 重く打鍵のスピードを上げる

最後の「重く打鍵のスピードを上げる」打鍵は弦を切る打鍵なので、コンチェルトやあまりに音量が必要な曲でしか使いません。ショパンでは「前奏曲集Op.28-24」のラストくらいでしょう。

Eric Lu – Prelude in D minor Op. 28 No. 24 (third stage)
2015年ショパン国際コンクール第4位のEric Lu(エリック・ルー)の演奏
この演奏は非常に高く評価されています。最後の鉄拳は必見です。

なので、この「バラード第1番」では2個目の「より重く弾く」打鍵を使います。
また、オクターブのどちらを強く弾くかによっても音響は変化します。正解はないので、より厚く、強い音ではなく「大きい音」が出る打鍵を探してみてくださいね。

和音を含む大変なパッセージは必ずレガートで

この「バラード第1番」には、和音を含んだ大変なパッセージが何箇所かあります。ここは、支えのあるレガートで乗り切りましょう。

和音の部分は全ての音を抑えてレガートにしなくて良いのです。和音から1つの音を選び、その音を支えにして次の音に指を運ぶのです。こうしないと、手を怪我しますし、そもそも人間には不可能です。

また親指の返しですが、ここもあまりレガートに固執するのもいけませんし、だからといって切ってしまうのも、逆にテクニックの連鎖を壊してしまいます。

一瞬だけなら繋がる場合がほとんどなので、出来るだけレガートに、でも必要なだけレガートにしましょう。

羽生結弦選手のステップの部分が大変

羽生結弦選手がステップを舞うcon fuocoの部分が、曲の最難関です。拍子が分かりづらく、それに加えて和音の連打が組み合わされるのでそれはもう大変です。

私の師匠(教授ではない)は曲をカット、ましてやショパンをカットするなんて言語道断という方なのですが、どうしてもこの部分が弾けない子はカットしてしまうようです。

この部分は様々なテクニックが統合して書かれているので難しいのです。和音連打と鬼パッセージ、拍子感をうまく感じながら、練習してみてください。

最後で全部バレちゃう「音階」

「バラード第1番」を弾くレベルだったら、音階なんて!と思うかもしれませんが、バラード第1番が弾けても音階が悲惨な場合もあるのです(他ならぬわたし)。

それもこの作品に限っては最後に3度の音階も出てくるし、ここで基礎力が無いことがバレてしまうのです(ある人はむしろ楽チンって感じ)。

確かに和音を含んだ鬼パッセージやcon fuocoの部分はめちゃくちゃ難しいですが、最後のただの音階でミスるのはもはや馬○です。どうせ弾けるだろって思っていると、最後に後ろ足を悪魔にちぎられるのですよ…しっかりさらいましょう。

まとめ

ショパン作曲のバラード第1番Op.23は、フィギュアスケートの羽生結弦選手が2015-2016シーズンに用いた楽曲で、見事にこの作品を体現しています。

ショパン初期の大傑作ですが、最初の「ド」や、文学性に富んだこの作品は奏者を苦しめているので、聴衆の皆さんはどうか温かく見守って下さい。

また、最後の音階で悪魔に後ろ足をちぎられることがたまにあるので、無視せずしっかりとさらって下さいね。

Aimi Kobayashi – Ballade in G minor, Op. 23 (second stage)

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