にほんブログ村
どうも、ピアノ部部長、音大生のこうきです。今回はショパン作曲のバラード第3番変イ長調Op.47の解説をしていきます。4つのバラードの中で唯一長調の作品です。
原作はポーランドの詩人、ミツケヴィチによるオンディーヌ(水の精)の詩です。つまり、テーマは「水」。西洋のオンディーヌ伝説は大抵バッドエンドですが、このバラード第3番はいかに?
目次
ショパン作曲「バラード第3番Op.47」の概要
ショパンのバラードで唯一長調で終わる
ショパンは4つのバラードを残していますが、この第3番は唯一長調で終わる作品です。

え?第2番も長調じゃないの?

そうなんだけど、終わりはイ短調なんだよね。
バラード第2番Op.38はヘ長調で書かれていますが、終わりはイ短調になっています。なんとも不思議な作品ですね。坂の上から魔女が追いかけてくる、という内容のバラードですし…。
水の精(オンディーヌ)伝説のバラード
水の精とは人魚に似た存在でしょうか。海ではなく、湖畔に住んでいる水の精は妖艶で、岸辺の男をたぶらかして遊んでいます。男は見かけに騙される人間なのでしょうか、すぐその気になってしまいます。
すると妖艶な水の精は本来の姿に戻り、男を喰らいます。ある意味、男を喰らうのをやめられないのですね…。
しかし、このバラード第3番では男を喰らいません。なんと、水の精が惚れるほどのイケメン紳士が水の精に迫ってきたのです。喰らってしまいたい葛藤に見舞われるオンディーヌでしたが、なんと男と結婚することを決めたのです。
それが、この作品が長調で終わる理由なのです。オンディーヌが男を喰らった喜びを表現しているのだったら、私はショパンの感性を全力で疑います。
ショパン円熟期の最初期の作品
ショパンの作品は優れた作品が多く、前期の作品にもバラード第1番Op.23や前奏曲集Op.28などがあります。しかし、ショパンの叙情性や書法の点で円熟を迎えるのはやはり後期です。
ポロネーズ作品Op.44や幻想曲Op.49、バラード第4番Op.52にスケルツォ第4番Op.54、ポロネーズ第7番Op.61は全て後期の作品です。
そんな中のバラード第3番Op.47は円熟期の先駆けのような作品です。
ショパン作曲「バラード第3番Op.47」の演奏集
シャルル・リシャール・アムランのバラード
前回のショパン国際ピアノコンクールで第2位とソナタ賞を受賞したシャルル・リシャール・アムランの演奏。日本では「テディベア」と呼ばれていたそうで、温かさのある音色が特徴です。
クリスティアン・ツィメルマンのバラード
私の最も尊敬するクリスティアン・ツィメルマンの演奏。的確な表現と熱のある音楽、我々の心をこんなにも揺さぶるのはこの人だけ。
チョ・ソンジンのバラード
こんな囲まれたなか弾けるか!?という感じですが、もはやショパンコンクールの覇者には関係ないようです。生音が録れてしまったのは最大の失態(音声さーん)。
ユリアンナ・アヴデーエワのバラード
ロシアのピアニスト、ユリアンナ・アヴデーエワ。独特な感性で演奏しますが全く嫌にならず、むしろ寄り添うくらい。
ショパン作曲「バラード第3番Op.47」の弾き方
場面にあったバラードを考えること
バラードとは日本語で「譚詩曲」。は?読めねぇから?って感じですが、要するに物語性です。
水面に葉が1枚落ち、波動が広がります。波動は行っては帰って来て、また行く。オンディーヌはまた男を探しに水面へ来てみるとあらびっくり!今まで喰らって来た中で断トツの騎士が!
どう誘惑しようかしら、でも喰らってしまいたい気持ちもある。とりあえずいっしょにダンスでもいかがですか?
こんな風に、物語は展開することにより進んでいきます。「起承転結」ですね。この作品の起承転結はこの言葉を知っていたのか、というくらいわかりやすく書かれているので、考えてみてくださいね。
(承が2個あるような感じだけど)
嬰ハ短調のところが難しい
このバラード第3番で1番難しいところは起承転結でいうところの「転」の嬰ハ短調の部分です。ここは序盤の左手から和音地獄の右手までフルに難しい箇所です。
以前記事にした「指を伸ばして弾いてミスタッチをなくす」練習が必要です。そもそも指を伸ばすと黒鍵の感覚をつかみやすくなり、また黒鍵と黒鍵の間にゆびが入りやすくなります。
ショパンは、特にバラードでは1曲につき超難しいところを作っているのですが、それは人間が弾ける限界を狙っているようです。
テンポに気をつけること
ショパンの作品は、実はあまりテンポの変化は必要ありません。というのも、テンポの変化が必要ならばきちんとテンポの指示を書いているからです。むやみなテンポの変化は曲の威厳を損ねます。
むしろ難しいところは少しテンポを落とすくらいの気持ちで良いんですよね。
まとめ
ショパン作曲のバラード第3番変イ長調Op.47を解説していきました。ミツケヴィチの詩が原作で、このバラードでは水の精は男を喰らいません。ショパンの4つのバラードで唯一のハッピーエンドの作品です。
難所は「起承転結」の「転」で、嬰ハ短調の部分。ここは指を伸ばして鍵盤の位置感覚を養う練習が必要です。これについては既にまとめてあるので、ぜひ一読してくださいね!
合わせて読みたい
発表会のオススメはこちら!
アップライトピアノとグランドピアノの違いはこちら
宇野昌磨選手で話題沸騰、ベートーヴェンの月光の弾き方はこちら
コメント