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どうも、音大生のこうきです。きょうの作品はピアノ弾きなら誰もが憧れる「別れの曲」こと、ショパン作曲の練習曲Op.10-3です。

目次
ショパンエチュード「別れの曲」Op.10-3について
「別れの曲」と呼ぶのは日本だけ
このOp.10-3を「別れの曲」と呼ぶのは日本だけだそうです。ショパン様、聞いておりますか、こちら日本では「別れの曲」として知られています。
「別れの曲」とは実は映画の名前だったのです。1934年に公開された、ショパンの生涯と名作を追った映画「別れの曲」のメインテーマとして使われたのがこのエチュードOp.10-3だったのです。
実際ショパンはリストに「これ以上の旋律を聞くことはもうできない」と言ったほど、リリカルで繊細な旋律が歌われます。
全音ピアノピースの難易度は嘘
ピアノを弾く人であれば1曲は持っているであろう「全音ピアノピース」。その裏についている作品一覧の難易度はだいぶデタラメなものです。つまり、この「別れの曲」の難易度は決して上級上(F)ではありません。リストの「ラ・カンパネラ」は上級(E)ですが、「ラ・カンパネラ」の方が100倍くらい難しいです、技術的には。
そんなに難しくない「別れの曲」
「ショパンエチュード」と聞くとOp.10-4や「黒鍵Op.10-5」「木枯らしOp.25-11」などが思い浮かびますが、この「別れの曲」はそこまで難しくありません。
そもそもテンポが速くないですし、指の強さも求められません。また4ページと短い作品なので、中学生でも演奏可能でしょう。
この作品を本当の意味で弾くピアニストはごく少数です。指導者様は「きちんとした歌心を持ち余裕を持ってから弾かせたい!」と思うかもしれませんが、大抵限度があるので弾かせちゃって大丈夫だと思います。
音大生が「別れの曲」を徹底解説
「別れの曲」は有名すぎる
この作品はCMやドラマで頻繁に使われるので、ピアノを弾かない人でも認知度は高いです。ピアノ素人でもこの「別れの曲」では耳が肥えているので、間違えるとすぐわかってしまうのです。
しかし安心してください。「別れの曲」は冒頭だけがよく知られているのです。中間部の大変なところはピアノ弾きしか知らないのです。友人などに聞かせるときは冒頭だけでもOKでしょう。
冒頭と中間部のギャップ
冒頭はリリカルでエモーショナルな旋律が歌われ、非常に気持ちがいいですが、なぜ中間部であんなに激した雰囲気になるのでしょうか。この「別れの曲」と似た作品にベートーヴェン作曲の「悲愴ソナタOp.13より第2楽章」があります。
実はこの作品も超有名で他の作品に引用されるくらいなのですが、中間部はなんとも言えない悲壮感が漂います。このように、いくら優美で甘美でエモーショナルな曲でも激した部分はあるのです。
やっぱり難しい「別れの曲」の中間部
ショパンエチュードの中ではかなり簡単な部類の「別れの曲」ですが、やはり中間部は難しいのです。調整も曖昧になり、臨時記号が猛威を振るいます。
コツはゆっくり弾くことです。え?ピアニストはめちゃくちゃ速くない?と思いますが、そもそもショパンはテンポの変化を指示していません。もちろん指示していないからやらない、という訳ではありませんが、めちゃくちゃ速く弾かなくて良いのです。
しかし少しでもカッコよく弾きたい、という方に向けてのこのサイトです。バッチリ練習法までお伝えします。
テクニック&練習法
旋律と伴奏の弾き分け
あのリストが絶賛した「別れの曲」の旋律をくっきりと出すのは最初のミッションです。伴奏が大きくて歌が聞こえないのは昨今のポップスのようです(おっと失礼)。
音量で音を変えると「音色で弾き分けて!」と言われますが、そもそも聞こえなければ意味がないのです。最初のミッションは旋律をくっきりと出すことです。
くっきりと出すには旋律を弾く指を意識するしかありません。伴奏と旋律を弾く!という強い意志を持つ他ありません。
中間部1〜4度のパッセージ〜
4度とは、ドとファのように、音が下記画像のように並んだ音程を言います。

これが連続して使われるのが2ページ目の下の方です。左手は半音階ずつです下りますが、右手は跳躍します。先に左手をやっつけましょう。
ヒントは「2回続けて弾く音を速く取る」ということです。具体的に説明しましょう。
例えば1.1と連続して使う場合、先に使う1を弾いたらすぐに次の音の準備をしましょう。そうすると無駄な力が入らず、滑らかに弾くことができます。
次に右手、右手は指先の感覚を敏感にして、跳躍の感覚を掴みましょう。黒鍵の間の感じや、白鍵と黒鍵の高さの感じ、鍵盤の奥を弾くか、手前を弾くかなどの感覚をフルで用いましょう。
中間部2「別れの曲」最大の難所〜和音連打〜
別れの曲最大の難所は3ページ目です。指のガイドがなく、間違えると意外と目立ってしまうのが難点です。しかし、よーく楽譜を見ると演奏のヒントが隠されているのです。
スラーを良く見て下さい。裏拍から拍頭へとつながっていますよね、これはショパンのヒントなのです。
ショパンのテクニックは、バッハの平均律クラヴィーア曲集に隠れています。ショパンは拍頭へと向かうテクニックを、この平均律クラヴィーア曲集より学びました。だから、この別れの曲のようなスラーが付くのです。
あとは指先の神経をフルに使って練習すれば、必ず弾けます!
音楽的なこと
リストが絶賛するメロディー
あのフランツ・リストが認める旋律は、ショパンが若い頃に書かれました。そこに後期の大傑作のような精神世界はなく、ただ純粋に音楽が流れるのです。
じゃあ私の思うままに弾くわ!ってことではなく、こねくり回すことなく、素直に歌うのがこの曲には会うのではないでしょうか?という提案です。あくまで提案ですよ。
後期の大傑作「バラード第4番Op.52」や「ポロネーズ第7番Op.61(幻想)」のようなドロドロとしつつ文学性を漂わせるような風格はないので、あまり神経質にならないでくださいね。
余談
私が思うショパン3大難しい曲は
- 前奏曲Op.28(全曲)
- バラード第4番Op.52
- ポロネーズ第7番Op.61「幻想」
だと思っています。
まとめ
ピアノ弾きの憧れ「別れの曲」は、実はそこまで難しくはないのです。中間部はきちんとショパンのヒントが書かれており、弾けるように書かれています。
全音ピアノピースの難易度は嘘なので、ぜひ1度弾いてみてくださいね。
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