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どうも、音大生のこうきです。本日解説する作品はショパン作曲の練習曲Op.10-4です。
目次
ショパン作曲 練習曲(エチュード)Op.10-4について
のだめで有名になったショパン「10-4」
ピアノを弾く人であれば誰もがしっている「のだめカンタービレ」の中で登場するこのショパン作曲の練習曲Op.10-4。コンクールで弾く曲を鬼教師、江藤先生が考えていると、のだめは「ショパンエチュードなら弾いたことありますよ」とさらっと弾いてしまった曲です。
実際さらっと弾ける人はごくわずかで、ほとんどの人はショパンの手の柔らかさと敏感さに圧倒されてしまいます。ショパンエチュードでサラッと演奏できるのはOp.10-12やOp.25-1.2くらいでしょう。
10-4はショパンコンクールでもよく弾かれる
ショパンエチュードを課題とするショパン国際コンクールでも、このエチュードOp.10-4は演奏されます。国際コンクールのレベルですから、音は立ってミスがない、テンポも速くて完成度が高いです。ショパンの楽曲を聞きたいときは、ショパン国際コンクールのYoutubeにいけば大抵の作品を聞くことができます。
またコンクールの映像もほとんどあげられているので、さまざまなコンテスタントの10-4の演奏を聴くことができます。映像ではないけど、お気に入りのショパンはこちら。
音大生が10-4を徹底解説
ショパンエチュードはがむしゃらに頑張って弾ける代物ではありません。次々壁を超えてもすぐに新たな壁が立ちはだかる、奥の深い曲です。実際、エチュードはたくさんありますが特にショパンの練習曲は、とてつもなく長い時間をかけて作っていくべきだ、とよく言われます。しかし先ほども書いた通りがむしゃらに弾いてもうまく弾けないのです、特にショパンエチュードは!
なので私、音大生のこうきが頑張ってよりよい練習法を伝授していきます。
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ショパン練習曲Op.10-4の内容
アウフタクトアウフタクトとは、日本語で弱起、上拍と呼ばれています。10-4のように4拍子だとしたら4拍目で始まる作品のことを言います(3拍目でも言うかも)。この作品においてアウフタクトはテクニックや音楽を構成する上で重要な役割を果たします。
例えば冒頭、アウフタクトを意識せずに始めると、力が入りっぱなしになり徐々に詰まってきます。しかし、アウフタクトを意識し1拍目で力を抜くようにすると、自然に演奏することができます。
これは、ショパンがバッハの平均律クラヴィーア曲集を基にテクニックを構成したことが由来です。この冒頭のような4つの音の下行形の箇所は、10-4ではすべて次の1拍目で力を抜くようにしてくださいね。
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テンポ
ショパンの練習曲はほとんどそうなのですが、テンポが非常に揺れやすいです。というのも、弾きやすい場所と弾きにくい場所が頻繁に入れ替わるからです。とくにこの練習曲Op.10-4はその傾向が強いです。
弾きやすいところは速くなり、弾きにくいところは遅くなります。自分ではわかっていても、録音すると大抵えーらいこっちゃ!になっています。
局所的にメトロノームを使い、テンポを矯正しましょう。また、弾けないところを無理やり速く弾くのではなく、弾けないところが弾けるテンポに合わせましょう。
古典的な音の配列の10-4
練習曲Op.10-1の記事でも述べた通り、白鍵の作品は非常に難しいです。が、これは跳躍する場合の話。Op.10-4のように音が密集しているときは、黒鍵があると混乱をきたしやすいです。
ショパンはショパン独自の演奏法を確立しましたが、まだ19歳〜23歳の間に書き上げられたようなので、まだまだ書法が甘い部分があります。それが、この黒鍵の入り混じった超複雑な10-4なのです。
指が太い人はかなりキツイ曲でしょうね…
広範囲のアルペジオの10-4
広範囲のアルペジオといえばOp.10-1ですが、この作品のアルペジオはちょっと違います。Op.10-1のようにいきっぱなしなら良いのですが、このOp.10-4は行ったり来たりのスパンが非常に速いのです。なので支えが甘くなり、とっ散らかった演奏になってしまうのです。
これを解消するためか、広範囲アルペジオの2の指で奏すべき箇所は8分音符で書かれていますが、意味があるのか…2の指を中心に手首を鍵盤と平行に動かすのは分かりますが、これをすると手首の神経を痛めるそうです。グレン・グールドもその1人でした。
テクニック
さて、じゃあこの作品をどう弾いたら良いか、解説していこうと思います。「支え」や「底の感触」という定義が曖昧な言葉を使いますが、これは後に用語集のような形で記事にする予定ですので、暫しお待ち下さい。
支えありきの10-4
支えとは鍵盤の底を掴む感触のこと。指がそこに当たった「コツン」という感覚ではないので、きちんと区別してください。
音量の小さなパッセージは支えを作るのが一般に困難とされますが、やってみよと意外と支えを作ることができるのです。ショパンは確かにか弱く、とろけるような手を持っていましたが、しっかりとした支えはあったようです。10-4や25-2でも、弱い支えを作ることは可能です。
支えさえも使わない奏法を確立したのはドビュッシーなので、ショパンにおいて支えは必要です。
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10-4は指先の感触で制す
先ほどお話しした黒鍵が入り混じった10-4を弾くには、この指先の感触が大切です。演奏しながら左右の鍵盤の感触、手の開き具合、また白鍵と黒鍵の高さの違いなどを敏感に感じ取りましょう。
目視による確認より、感覚の確認の方が本番では上手くいきます。指先を敏感にして演奏しましょう。
左右のバランス~シャイで内気な子~
このOp.10-4は非常に難しいのです。特に細かいパッセージは厄介で、本番で弾き出した途端「あ、止まる」と思わせる恐怖の作品です。しかし、細かいパッセージにだけ目を向けることはできないのです。
細かいパッセージの裏には和音の刻みが「隠れて」いますが、必死になると隠れずに「こんにちは」してしまいます。せっかく細かいパッセージが弾けるのにその和音の刻みが「こんにちは」して台無しになる演奏はかなりあります。
10-4において、和音の刻みはシャイで内気な子なのです。あんまり表に押し出さないでくださいね。

練習法
このエチュードOp.10-4で必要な練習は主に3つです。
メトロノーム
テンポがえらいこっちゃ!になる演奏はコンクールで多いです。難しいところが弾けるテンポに、簡単なところのテンポを合わせてくださいね。
しかし10-4をチンタラ弾かれたらたまったもんじゃないので、大体2分20秒台には乗せてください。私の知ってる最速の10-4はこれ
支え
支えは鍵盤の底を掴む感覚ですが、押し付けることや、打鍵と一緒にコツンと鳴らす、ということとは違います。
しっかりした柔軟な支えを作ることに成功すると、あっという間に10-4でも弾けるようになります。感覚が全てなので、自分で思考錯誤して自分の支えを作ってください。
感覚
ここでいう感覚とは、鍵盤の位置の感覚のことです。鍵盤に指の側面が当たる感じや、黒鍵と白鍵の位置、また広範囲のアルペジオも、支えと感覚を鍛えることにより弾けるようになります。
10-4、いやショパンエチュードは感覚と支え、そして音楽のエチュードなのです。
ショパン:10-4まとめ
ショパンエチュードOp.10-4は火薬のような作品です。危険だと思っていれば安全、安全だと思っていると危険なのです。まぁ、みなさんも10-4を本番に出して「あ、止まる」という感覚を1度は味わってみて下さいね。
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