【ショパン】ショパンエチュードOp.10の解説とオススメ音源

【ショパン】ショパンエチュードOp.10の解説とオススメ音源 ショパン
この記事は約8分で読めます。

にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ
にほんブログ村

どうも、ピアノ部部長、音大生のこうきです。今回は当サイト内でも「そんなに難しくないよ〜」と言っているショパンエチュードについて解説していきます。今回はOp.10の方ですよ!

Op.10はOp.25に比べて純粋なテクニックが求められます。指が広がるか、指が調和しているか、ポリフォニー音楽を理解しているかなど。曲調がはっきりした作品も多いと思います。

ショパン:エチュードOp.10の概説

Op.10は自身のピアノ協奏曲第1番Op.11を演奏するために作られました。つまり、Op.10の練習曲はショパン自身の練習曲でもあったわけです。Op.10を全て弾ければ、ピアノ協奏曲第1番が弾けるかどうかは不明…。

またこの練習曲集はリストに献呈されました。ショパンがリストに見せた途端、リストはそれを弾きだしました。初見の天才でもあったリストは、弾けない作品なんてほとんどなかったのです。

しかしどっこい。この練習曲集はリストをもっても弾くことができなかったと言います。「1週間待ってくれ!1週間後に必ず弾けるようにしてみせる!」とリストは言いました。本当に1週間後に弾けるようにしてしまったみたいですよ。

Op.10の第1曲目、Op.10-1の冒頭をご覧ください。こちらは左手の「ド」を基音とする倍音列で構成されています。和声の神童、ショパンから和音の基礎となる倍音列を献呈されたリストの心情はいかほどのものであったでしょうか。

Op.10-1ハ長調 右手の広範囲にわたるアルペジオ

Seong-Jin Cho – Etude in C major Op. 10 No. 1 (first stage)

右手の広範囲にわたるアルペジオの練習曲です。ピアノ協奏曲でいうと第3楽章に出てきますね、聞くとすぐにわかると思います。

こちらの作品はハ長調で、白鍵の作品は難しく…と書こうと思いましたが、それは全く嘘でした。あまりに手を広げないといけないため、黒鍵を使う際は手を黒鍵側に押し込む必要があります。指にかなり負担がかかり、動きの滑らかさも損なわれてしまいます。

ショパンの手はさぞかし柔らかかったことでしょうね…。

Op.10-2イ短調 右手の3.4.5指による半音階

Dmitry Shishkin – Etude in A minor Op. 10 No. 2 (first stage)

こちらを演奏するときは、となりに整形外科医を置いてください。もちろん冗談ですが、ショパンでさえこう言ったのですよ。

右手の3.4.5指による半音階の練習曲。実は本当に人間の限界を少し超えた作品なので、手によっては弾けないのです。特に4指への負担が大きく、ピシュナの練習曲のような痛みが襲います。

こちらは腱なので、鍛えられません。しかし安心してください。Op.10-2が弾けなくても、ピアノは弾けますから!

Op.10-3ホ長調 ポリフォニー様式と旋律の練習曲

Lang Lang plays Chopin Etude Op.10 No.3 in E Major at The Berlin Philharmonic.

おなじみ、別れの曲です。リストも「これ以上の旋律は聞いたことがない」というほど、珠玉の旋律を付されました。

協奏曲で言えば第2楽章にあたりますね、調性も同じです。右手3.4.5にいかに魂を込めて旋律を歌うかが求められます。

Op.10-4嬰ハ短調 手の開閉と細かいパッセージ

Chopin – Etude Op. 10 No. 4 – Evgeny Kissin.

のだめで有名になったOp.10-4ですが、聞いているように難しいです。古典的な音の並びは黒鍵と白鍵をランダムに行き来し、指に負担をかけます。手を広げたり閉じたり、なんとも忙しい…。

中途半端なテクニックでは中途半端な演奏しかできない、恐ろしい作品ですね。

Op.10-5変ト長調 複雑なパッセージと黒鍵

Kate Liu – Etude in G flat major Op. 10 No. 5 (first stage)

みんな大好き「黒鍵」です。このOp.10-5は以前は簡単な曲というレッテルを貼られていましたが、今はそうではなくなりました。

というのも、簡単なあまりに曲に対する完成度が上がりに上がり、ただ「うまく弾ける」だけでは普通の黒鍵になってしまうのです。実際、黒鍵なんてコンクールでは使えないと言われていましたが、最近はショパンコンクールでも演奏する方は多いです。

Op.10-6変ホ短調 ポリフォニーと左手の練習曲

Daniil Trifonov – Étude Op. 10, No. 6, in E-flat minor

変ホ短調というショパンではあまり聞かない調で書かれたこの作品は、ポリフォニーの練習曲です。陰鬱でなにか消化不良のような音楽が流れ続けます。

この作品は評価がしにくいのか、コンクールではもはや選択禁止となっています。Op-10-3.6.12は選択不可になるケースが多いです。

Op.10-7ハ長調 右手の3.6度の交代と同音連打

Yike (Tony) Yang – Etude in C major Op. 10 No. 7 (first stage)

この作品は譜面を見たときから「どう弾いたら良いんだこれは…」と悩んでいますが、今も悩んでいます(おい)。上声部はレガート、下声部は同音反復、いや無理ちゃう!?

いや、弾ける人がいるから必ず弾けるはずなのですが、その演奏法とは一体…。少なくとも、手の柔軟さは限りなく必要でしょう。

Op.10-8へ長調 右手のアルペジオと左手の旋律

Eric Lu – Etude in F major Op. 10 No. 8 (first stage)

コンクールとか試験とかで引っ張りだこのOp.10-8ですが、皆さんの思っている40倍は難しい作品なのです。何度も言っている通り、ショパンはかなり手が柔らかい人でした。

そのため、微妙に弾けなくて誤魔化してしまう音が多いのです。実際、舐めてかかった人はそのような演奏になってしまいます。しかもそれがスタンダードになってきて、もはや本来のOp.10-8はどこへ…。

Op.10-9へ短調 左手を広げたアルペジオ

Chopin Etude Op 10 No.9 Valentina Lisitsa

この作品はどうやらOp.10の中で1番簡単だと言われているようですが、実際はそんなに甘くありません。左手の1.3でオクターブが掴めないと、大分大変なことになります。

慣れてしまえばレガートでなくてもレガートに聞かせることができるのですが、真面目にレガートにしようとする人にとってはかなりの苦行でしょう。繋がらなかったら潔く切って!

Op.10-10変イ長調 右手親指と2.5指による6度

Seong-Jin Cho – Etude in A flat major Op. 10 No. 10 (first stage)

この作品はOp.25-8と同じ6度の練習曲です。しかし、こちらは平行6度ではなくトレモロ型の練習曲で、親指にかなり負荷がかかります。また2.5で6度を掴むため、2.5指にもそれなりの緊張がかかってしまいます。

ほかの指に変えられるのが良いのですが、延々と1.2.5しか使えないので、ショパンにしてはマッチョな作品だと思います。

Op.10-11変ホ長調 両手広範囲のアルペジオ(ポリフォニー)

Tiffany Poon – Etude in E flat major Op. 10 No. 11 (first stage)

地味に超難しい作品はOp.10-11です。ただ単に音を並べてアルペジオ〜ってやれば気合いで乗り切れますが、これを「和音」として捉えるか「ポリフォニー」として捉えるかで難易度が全く変わります。

6声のポリフォニー音楽と考えたらもう…。耳が3個必要です!

Op.10-12ハ短調 左手のパッセージと右手のオクターブ

Charles Richard-Hamelin – Etude in C minor Op. 10 No. 12 (first stage)

みんな大好き「革命」です。高校生まではこれを弾いてもコンクールは通るのですが、大学生では無理ですね。でも名演が出来る自信のある人は、ショパンコンクールでも弾いちゃうんですよ。

よく衝撃的な出来事があったときにCMやバラエティ番組で使われますが、和音自体はそんなに衝撃的ではないのです。ただの属7の和音。

まとめ

ショパン作曲練習曲Op.10は、自身のピアノ協奏曲第1番ホ短調Op.11を演奏するために作られたエチュードです。Op.10で練習したテクニックは、かならずコンチェルトで生かされます。

アルペジオ、パッセージはもちろん、ポリフォニーにも精通したOp.10はJ.S.バッハに由来するのでしょうか?

合わせて読みたい

コメント

タイトルとURLをコピーしました