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どうも、ピアノ部部長、音大生のこうきです。今回は知られざるハノンの使い方を6つ、ご説明しようと思います。というのもハノンを弾くとき、私たちはとても義務的になってしまうからです。頭を使わない練習は、現状維持か下手になる一方です。
たかがハノン、されどハノン。ハノンを使うか使わないかは自由ですが、やるなら「頭」を使って、ハノンのエッセンスを100%吸収したいですよね。そんな方のために、ピアニズムによる活用法や、ハノンを「治療」として使う方法を伝授しようと思います。
ハノンはぶっちゃけやらなくてもいいのですが、練習の習慣になっている方は辞めなくて良いですよ。その代わり、ハノンをやる意味を考えて、自分の演奏の成長のために使いましょう!

目次
奏法(ピアニズム)による活用法
リスト奏法←指に意識を向けること
フランツ・リストは「1日に重い鍵盤で6時間練習しなさい」と言いました。ショパンに比べてムキムキ派のピアニズムのリスト奏法でさえ、練習は6時間でいいのです。6時間以上練習が必要な人は「根性論」の持ち主か、馬◯か、天才でしょう。
それはさておき。リストの奏法は指に意識を向けることでテクニックを作り上げています。リストの弟子、アルフレッド・コルトーの「ピアノ・メトード」は指を徹底的に鍛えるメトードです。そのため、1日に1時間以上は絶対にやるな、とも書いてあります。つまりリストの奏法は指の筋力が必要なピアニズムなんですね。
ハノンはその「指を強くする」という一役を買うことが出来ます。ハノンを弾くときに皆さんやるでしょう、1音1音しっかり弾くことを。その際、リストピアニズムであれば、出来るだけ指に意識を向けて行ってみてください。腕を用いて落としたり、指を硬直させて大きい音を出しては、指は強くなりません。
リストピアニズムは、指を強くしなくてはいけないので、鍛える際はとても疲れます。しかし、その暁にはリストのような凄まじいテクニックを手に入れることができるのです。やらずにはいられませんね!
ショパン奏法←腕から全体に意識を向けること
ショパンはあまり指の強くない人でした。それが故、出来るだけ腕の力を利用した演奏法を確立しました。当時はショパンがピアノ協奏曲第1番Op.11を献呈したカルクブレンナーという作曲家兼ピアニスト兼ピアノ教育者のピアニズムが流行っていました。それはメンデルスゾーンやモシュコフスキーに見られる、ある意味古典音楽の限界の技法でした。
ショパンはそんな「古典の限界」の音列をどう弾いたら良いか考え、指は独立するものではなく、調和するものだという考えを編み出しました。これは、よく言われる「5本の指の独立」に反して「5本の指は調和する」という考え方です。
実際、演奏科学の研究者、古屋晋一氏によれば、1本の指を動かすだけでも他の指を動かす神経が働き、微妙に動いているらしいのです。つまり、そもそも独立なんてできず、指は他の指と調和しあって動いているのです。
例えば4の指(薬指)は単独で上げることが出来ませんが、指の独立している人は上げることが出来ます。しかしこれは、ほかの指を下げる筋力が働いているから出来ることで、真の独立ではありません。
ハノンはそんな「指の調和」も促してくれます。1本の指を動かしただけでほかの指も動いてしまうなら、それを意識しなくてはなりません。ショパンのピアニズムをハノンで練習する場合、非常にゆっくり、腕から指の先まで全体の神経を鋭敏にして演奏しましょう。
イメージで言えば、皮膚や筋肉の細胞1つ1つにセンサーが取り付けられ、一定量の意識が向けられていないとその部分が発光する、みたいな…。バレリーナは体全体に神経を行き届かせていますよね。ピアニストもバレリーナのように、全身とは言いませんが、腕から先の神経は鋭敏にしてみましょう。
キーワードは「ゆっくり」です。
ロシア・ピアニズム←ハノンはいらない
ロシア・ピアニズムは最近有名になってきた奏法ですね。ショパンのピアニズムと似ていますが、ロシア・ピアニズムの最大の特徴は椅子が高いことです。ソコロフ、ボロディンをご覧ください。めちゃ椅子高いですよね。そうすると勝手に手首が上がり、人間の「握る」という動作に近くなります。
この「握る」という動作をピアノに生かしたのが、ロシア・ピアニズムだと思われます。
さて、そのロシア・ピアニズムにはハノンは必要ありません。なぜならロシア・ピアニズムは筋力をあまり必要としない奏法だからです(結果的に筋力が付くんだけど)。もともと持っている筋力をどう使うかでテクニックを構成していくので、特別に筋力をつける必要は無いんですね。
力づくで弾く必要はありませんので、怪我をしにくく優しいピアニズムと言えるでしょう。
(ロシア人の頑丈な体格の人にしかできないと思われがちだけど、意外とそんなことないんですよ。むしろ華奢な女性にはオススメなくらい)
ハノンは指の治療 こんなときに使いたいを3個
自分の奏法を見直したいとき
先に3つのピアニズムを意図に反して詳しく説明してしまいましたが、自分のピアニズムをあまり良く理解していない人がほとんどだと思います。しかし、自分の演奏法を知ることは自分のテクニックを知ることです。自分がどんな起源のピアニズムを使っているか、考えてみましょう(大体上のどれかになります。師匠の師匠の師匠の…と辿って行ってみて下さい)
ハノンは自分の奏法を見直すことにも使うことができます。音列が平易で、弾くのに余裕があるからです。ゆっくり弾いたり、限界を少し超えるくらい速く弾いたりすると自分の弱いところが浮き彫りになるので、そこを強化しましょう。
初学者でピアノを弾くのに慣れていないとき
初学者の方は「左右別々指が動かない」と嘆いていることでしょう。しかし安心してください。ハノンを使えば左右別々に動くようになります。それは、人間の体は左右対称に動かすことに慣れているけど、ハノンは左右対称ではないからです。
ピアノを弾いていない人は、親指を動かすと左右の親指、中指を動かすと左右の中指が動く、左右対称の動きをします。しかしハノンはどうでしょう。右手の親指を弾くときは左手の小指、右手の人差し指を弾くときは左手の薬指が動くのです。このように、人間の左右対称の動きを崩してくれるのが、ハノンの役目です。
だから、特に初学者の方にオススメなのです。私たちは、もはや左右対称に動かすことに違和感を感じますね!
筋力をつけたいとき
ロシア・ピアニズムの場合は筋力はいりませんが、特にリストの奏法は筋力が必要です。ですから、その筋力アップにはハノンが適していると言えるでしょう。ピシュナやコルトーもありますが、ちょっと面倒くさい…(とても良い教材には変わりない)。ハノンで済むなら、ハノンで済ませたい!
お断り
私自身がショパンとロシアピアニズムを混ぜているせいか、リスト奏法が悪い〜みたいな書き方になってしまいましたが、決してそんな意図はありません。ピアノは指で弾くものですから、指に意識を向けるのは当然のこと。私の思想がおかしいと解釈していただければ幸いです。
まとめ
ハノンの使い方を6つご紹介しました。まぁ、ロシアピアニズムでは「使わない」使い方を説明しちゃったんだけど…。
ハノンの他にも、指を鍛えたり神経を通わせたりする教材は、現在多くて出ています。ピシュナにコルトー、ブラームスの51の練習曲も実はこの部類に入るのです。
ですがやっぱりハノンのファンは多いんですよね!ハノンを愛すのもいいですが、ほかの練習曲にも目を向けてみてください。あ、浮気になるかな?
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