【練習法】現役音大生が語る「音大生の練習法10選」

練習法
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どうも、音大生のこうきです。今回は、皆さんの悩みであるピアノ練習法について解説していきたいと思います。ここでは主にテクニックについて解説します。

目次

なぜ練習法が必要か?

なぜ練習法が必要かと思う方もいるかもしれません。練習方法わかっていると、練習の効率化ができ、より上達に結びついた練習ができるようになると思います。

例えば、1つの曲を1日5回繰り返す練習法や、極端に遅いテンポで練習することに意味はありません。無駄な練習を知ることが出来るのも、練習法を学ぶ意義だと思います。

練習の効率化を図るため

私のような音大生でも、日々の授業が忙しく練習時間はあまりよく取れません。それなのに効率の悪い練習をしてしまっては、上手になるどころか下手になってしまうことさえあるのです。

時間があるからたくさん練習できる環境にいても、下手になる可能性はあります。演奏科学の研究者の古屋晋一さんは、練習は今より上手くなるか現状維持か下手になるかの3つだとおっしゃっています。

どんな練習がどんな効果をもたらすか知るため

ピアノ経験者なら誰もが聞いたことがあるであろうハノンの練習曲。冒頭のリズムの変奏表を見て、それ通りにリズム練習した方も多いかもしれません。

しかし、それをやって上達しましたか?今までより指が回るようになって、より音楽的な表現ができるようになりましたか?

良い練習とは、自分が上達を感じられる練習です。それ以外の練習は現状維持か、下手になる練習でしょう。良い練習の条件はただ1つで、今より上手になることです。

無駄な練習を減らすため

ピアニストの赤松林太郎さんは、著書の虹のようにの中で、無駄な練習はしない、と仰っています。

ただでさえ忙しい音大生やピアニストの練習時間はたかが知れています。その中でどんな練習をするかが今後上達していくか、現状維持のままか、それとも下手になるかを決めます。

そのため、練習法を知るという事は、上達につながることだと思っております。

練習法

時間

長いほうがいい(3時間45分以上)

いくら時間がないとは言え、1日に3時間45分以上練習した学生は演奏の上達が見られたと言う研究結果が出ています。私のような田舎に住んでいる者にとって3時間45分は軽いのですが、音出しの時間の制限が厳しい地域ではなかなか難しいでしょう。

3時間45分とまではいかなくても、2時間でもより集中して濃密な練習ができれば、3時間45分に匹敵すると思います。

分割すること

時間を分割するといいことも、演奏科学によって証明されています。つまり、1日3時間練習するとしたら朝の1時間、昼に1時間、夜に1時間と分割する方が練習の効率が良いそうです。

これは、練習と練習の間の時間で、練習の記憶を再構成しているからだと分かっています。人間は休憩がないと記憶を維持できないそうです。

自転車に乗る練習をした時思い出してください。自転車に乗る練習は一気に時間練習するのではなくこまめに休憩をとって練習します。それと同じ議論が通用すると思います。

午前中に基礎練習をすること

これは少し前のピアニストのヨーゼフ・ホフマンが、演奏科学の発展していない時に提唱していましたが、これは本当であると証明されました。

人間は、午前中の方がインプット能力が高いそうです。つまり体の動きに関する記憶も、午前中の方がインプットされるのでしょう。音階や分散和音、今演奏している楽曲の特に難しい部分などを午前中にされると良いでしょう。

細かい休憩を挟むこと

これは、先程の時間を分散した方が良い話と同じで、細かい休憩の間にその練習が頭の中で再構築されます。逆に経験をしないといつまでもその記憶が構築されずに、ただ消えていってしまうのです。

よく音大では、何時間練習した何時間ぶっ通しで練習したと自慢する人がいますが、むしろ1時間でもぶっ通しで練習する方が効率は悪いのです。14時間なんてぶっ通しても…

練習方法

タッチの練習(3つの動作)

タッチの様子が主に打鍵支え離鍵に分類されると思います。

打鍵とは、鍵盤を下におろす動作のことをいいます。つまりタッチのことです。音色が多いピアニストは、様々なタッチを持っていると言うことができるでしょう。様々なタッチで練習しなくてはなりません。

鋭いタッチやマルカートのようなタッチ、スタッカートの軽いタッチや弦のような厚いタッチ、どれも磨き様があるタッチです。特に象牙で作られたピアノを鳴らすのは非常に難しいので、スピードとキレのあるタッチを練習するのは必須だと思います。

感覚の練習

感覚の練習とは、指先の感覚のことをいいます。ショパン作曲エチュードOp.10-4のような黒鍵と白鍵が入り混じったパッセージを弾くには、指先の感覚が必ず必要です。

また、本番では目で見た情報より、指先の感覚の方が信頼しやすいのです。本番では照明や明かりの当たり方が全く違うので視覚的な情報はあてになりません。

指の位置関係や黒鍵と白鍵の間の感じ、またタッチの感覚もこの感覚の練習で養うことができます。頭を使った演奏をしなくてはいけないのはもちろんですが、感覚に頼ることも1つの手だと思います。

耳の練習

耳の練習とは主に音楽表現の練習のことをいいます。演奏科学では、上手い人の方が指より耳を意識してピアノ弾いていることがわかっています。1度も演奏したことないけれど、よく聞いたことがある曲であればピアノ演奏できるのはこのためです。

耳に意識を集中して、音楽の行方を見守ります。自分の思うような音楽ができていない場合は、その自分の音楽はどのようにしたら演奏できるようになるのか考えます。

耳の感覚というのはとてもわかりづらいので、あえて耳栓を使って練習してみるのも手だと思います。無駄な音が排除されて必要な音だけが耳に届くので、演奏の粗い箇所がよくわかります。

意識すること

脱力

力を入れて弾くより、脱力して弾くことが脳にとっては難しいことがわかっています。力を入れると脳の多くの場所が活動するのに対し、脱力すると脳のより少ない部分で演奏しようとするからです

また、力を入れて弾くより脱力した方が感覚が研ぎ澄まされるので、より正確に演奏することができます。

しかし、この脱力が本番でできなくては意味がありません。本番で思い切って脱力するためには、普段から徹底した努力が必要となるのでこれは常に意識しなくてはなりません。

習慣化

人によっては1日何時間練習すると決めている人もいますが、練習時間に波のある人が多いと思います。それでは演奏の実力に波ができてしまい、安定したピアノ演奏ができなくなってしまいます。

朝起きたら1時間練習する、寝る前に1時間練習するなどと最低限の練習を習慣化することによって、演奏は維持されます。

本番前は多く練習したい気持ちもわかりますが、こういった習慣化によって演奏の質は安定し、また常に向上することができるようになるので、歯を磨く感覚と同じようにピアノの練習をしてくださいね。

癖を直す

癖とは、自転車に乗るようにずっと忘れられないものです。しかし、ピアノの演奏においては癖が取れないと怪我をしてしまったり、いつまでも上達できないと言う状況になってしまいます。

癖を治すのは最優先です。親指のポジションが白鍵より落ちてしまったり、指が極度に硬直してしまうような演奏法は、必ず怪我を引き起こしてしまいます。癖を直すのは大変ですが、常に意識することでのみ癖を排除することができます。

私が一時期やっていた練習法を紹介したいと思います。当時、小指の支えがどうしても弱くなってしまう癖がありました。その際輪ゴムを手首にはめて、小指の支えが弱くなったときにゴムを弾いて手首に痛みを与えていました。

自転車に乗る際は、失敗すると転んで痛い目をすることになります。それと同じ状況自分で作り出してみました。

結果はハーフ&ハーフといったところで、小指の支えは直に良くなりました。しかし、本当に輪ゴムの意味があったのかはわかりませんでした。少なくとも輪ゴムで痛みを与えることは体罰に近いので、あまりやらない方が良いでしょう。

まとめ

ピアノ練習法は大きく時間、練習方法、意識することの3つに分類され、その中では3時間45分以上練習する方が良いこと、分散する方が良いこと、脱力をする方が演奏の正確性が増すことが分かりました。

また、癖を直すことは最優先です。癖をやってしまうたびに、その癖は脳に刻み込まれて治すのがより困難になっていきます。治すなら今です。

今まで練習法を考えたことがない人や、体の使い方を勉強したことがない人は、1度勉強してみるとより多くのことがわかるように思います。 古屋晋一さんの本が参考になるので、参考文献をご覧ください。

参考文献

  1. 古屋晋一著 『ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム』 2012年 春秋社
  2. トーマス マーク,トム マイルズ,ロバータ ゲイリー著 小野ひとみ監訳 古屋晋一翻訳『ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』2006年 春秋社
  3. 赤松林太郎著 『虹のように 』2016年 道和書院
  4. ヨーゼフ ホフマン著 大場哉子翻訳『ピアノ演奏・Q&A』 1989年 音楽之友社

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