【ピアノ】音大生が解説「ピアノメーカーのあれこれ」

ピアノメーカー
この記事は約10分で読めます。

にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ
にほんブログ村

どうも、音大生のこうきです。今回は下記ピアノメーカーについて解説していきます。どのピアノも日本ではメジャーで、国際コンクールにも使われる銘器となっています(コンクールで使われるピアノは2000万円以上だけど)。

  • ヤマハ(YAMAHA)
  • カワイ(KAWAI)
  • スタインウェイ&サンズ(Steinway &sons)
  • ベーゼンドルファー(Bösendorfer)
  • ベヒシュタイン(Bechstein)

目次

ヤマハ(YAMAHA)

2010年のショパン国際コンクール覇者 Yulianna Avdeeva (ユリアンナ・アヴデーエワ)
ヤマハのCFXを使用し優勝しました

世界で初めて良質なピアノ安定して大量生産することに成功したのが、このYAMAHAです。家にあるピアノはほとんどがYAMAHAかKAWAIでしょう。また、どのホールにも、大抵YAMAHAのグランドピアノが置いてあると思います。

YAMAHAは有名なCシリーズからハイグレードのSシリーズなどがあり、多種多様なラインナップのピアノがあります。CFXはYAMAHAの力を総結集した最高グレードのピアノで、国際コンクールでも多くのコンテスタントが使用し、2010年のショパン国際ピアノコンクールではユリアンナ・アヴデーエワがCFXを使用し見事優勝しました。

2015年のショパン国際コンクールでも2位のシャルル=リシャール・アムランがCFXを使用し、温かみのある音色で称賛を受けました。

音色

どのピアノメーカーよりも1番普通の音と言えるでしょうか。ピアノを弾く人によって音が変わりますし、ピアノを弾く人が成長させるピアノと言っても良いでしょう。打鍵の強い人が弾けばブリリアントな響きになり、柔らかなタッチの人が弾けば柔らかな音色がするピアノに変化します。

1番平均的な音がするので、スタインウェイのような金属的な音はしませんし、ベーゼンドルファーのような深い音もしません。つまり、どのような音にも変化できるピアノだと思います。

YAMAHAのピアノは同じ品質のピアノを大量生産しているので、ピアノの個体差は見られません。なので、家のYAMAHAと同じ感覚でホールのYAMAHAも弾くことが出来きます。

タッチ

タッチは軽いのもあれば重いのもありますが、平均的に軽いように思います。誰でも弾けるピアノを開発したのがヤマハなので、万人に合った軽いのもあれば重いのもありますが、平均的に軽いように思います。誰でも弾くことができる感触が特徴的と言えるでしょう。

しかし、ヤマハばかりで練習していると、海外産のピアノを弾くときに大変苦労します。スタインウェイのタッチはYAMAHAのタッチとあまりにも違うので、苦労することが多いです。

その他

YAMAHAはフォルムチェンジが多いです。譜面台の形や、側面の形、脚の太さなどはかなり変わっています。CFXの側面の形がカッコいので、ぜひ見てみてください。

またYAMAHAには100周年モデルというバージョンがあり、2002~2003年に限定発売されました。このピアノは100周年に際し、YAMAHAの調律師や修理技師、またピアノ製作者の叡智が集結した最高モデルのピアノで、C3型と同じ大きさとなっています(わたしのピアノはこれなの)。

カワイ(KAWAI)

59:20あたりから、チャイコフスキー国際ピアノコンクールで2位を獲得した
藤田真央さんがSHIGERU KAWAIを弾いているのが分かります。
(この浜松国際アカデミーでは優勝)

SHIGERU KAWAIで最近トレンドのカワイ、日本の2大ピアノメーカーの1つですが、意外と欧米にもKAWAIのピアノは置いてあるそうです。YAMAHAと同じく安定して大量生産をするメーカーです。

KAWAIではスタインウェイの下位モデル「Boston」も、スタインウェイ本社から依頼を受けて生産しています。安定供給を求めたスタインウェイの思惑にぴったりだったのが、このKAWAIだったようですね。

音色

カワイは少しスタインウェイに似た明るい響きがします。あまり意識しなくても勝手に明るい音が出てくれるので、コンチェルト向きとも言えるでしょうか。プロコフィエフやラフマニノフなどのロシア音楽に合った響きがします。

しかし、勝手に明るい音が出てしまうので、ベートーベンの2楽章のようなテンポの遅い曲になると、大変扱いが難しくなります。ブラームスのような深い響きを持つ曲は、弾きにくくなってしまいます。

タッチ

感触は比較的重いように思います。YAMAHAよりも個体差があり、軽いものは軽いのですが、重いピアノはものすごく重く感じます。個体差が激しいのがKAWAIの特徴でしょうか。

また軽い重いの問題ではなくふわふわした感触やねっとりした感触を感じる人もいるかもしれません。ピアノは湿気や温度によって鍵盤(アクション)に水分が入ったり抜けたりするので、タッチはかなり変わります。実際、梅雨や夏季は除湿器をほぼ1日中付けっぱなしにするなどの対処をする人もいます。

その他

最近、SHIGERU KAWAIという新しいピアノが出ました。ショパン国際ピアノコンクールをはじめとする数々の国際コンクールでも使用され、評判を集めています。SHIGERU KAWAIが有名になりすぎて、他のKAWAIのピアノが表に出づらくなったのはどうなのか…

しかしこのピアノ、日本ではあんまり普及していないようで、置いてあるホールもそこまで多くはありません。わたしも弾いたことがないので、いつか触ってみたいです。

スタインウェイ&サンズ(Steinway &sons)

大抵のホールにおいてあるピアノはスタインウェイ&サンズです。ピアノ弾きはこのピアノの存在を知ると少し大人になれたような気がするのです。「スタインウェイ」「スタンウェイ」皆さんはどちらで読んでいますか?

国際コンクールでも1番多くのコンテスタントに選ばれる信頼のメーカーで、特許は100を超えます。中でもすごいのは、あの黒い塗料は、実はピアノ本体から浮いているのです。そんな「浮かせて塗料を塗る技術」はスタインウェイならではの技法です。

音色

どんな音でも出すことができるスタインウェイです。 基本的にどのホールにも置いてあるのは、どんな演奏者にも似合うピアノだからでしょう。 弾く人によって音色がガラリと変わり、その人の力量をピアノが見抜いてしまう恐ろしいピアノでもあります。

しかしこのスタインウェイを弾きこなすことができればもはや最強で、自分だけの音色を作り上げることができます。どんな曲を弾いても似合う最強のピアノです。

タッチ

スタインウェイは100以上の特許を取得しているので、タッチは他のピアノとは全く違います。今は少なくなりましたが、象牙の鍵盤はかなりの癖があります。コンクールで当たると嫌です。最近は木製の鍵盤のピアノが主流なので大丈夫ですが…

音大生で家にスタインウェイがある人は限られているので、本番でスタインウェイを弾くとかなり違和感があります。YAMAHAのピアノのアクションをスタインウェイにしてしまうこともあるんですよ。

その他

スタインウェイの特徴は、弦の張力が低いことです。見てみるとわかるのですが、フォルテでスタインウェイを弾くと、ピアノの弦がかなり震えるのがわかります。KAWAIも同じ店を使っているのですが、功を奏しているのかどうか…

そんな張力の低いスタインウェイでも弦が切れることがあります。その動画はこちら。

ラプソディ・イン・ブルーを演奏中、手前のピアノの低弦がバコンと切れます

ベーゼンドルファー(Bösendorfer)

ちょっとピアノを見てもなんて書いてあるかわからないけどなんとなくかっこいいピアノはこの「Bösendorfer(ベーゼンドルファー)」ですよ。「ö」これは日本語で言う「え」の音になりますから、覚えておくとよいかもしれません。顔みたいですよね。

音色

深い哀愁のある音色がします。個人的にはブラームスが1番似合うと思うのですが、本当に重厚でどこまでも深い音がします。非常頑丈につくられていることが分かるガッツリした音も聞くことが出来ます。

しかし、スタインウェイのようなブリリアントな響きはあまりしません。ベートーベンやシューマン、リストなどでは似合いますが、ショパンやドビュッシー、ロシアの作曲家の作品などではあまり似合わないと思います。

タッチ

ベーゼンドルファーは、ピアノの魔術師フランツ・リストの弾く力に耐えられるように設計された、とても頑丈なピアノです。なので、タッチは重く、がっちりと設計されています。

しかし、変な重さではありません。弾き応えのある重さなので、嫌になりません。私はベーゼンドルファーのタッチが1番好きです。重音グリッサンド(3.6.8度で2つ音を鳴らしたままグリッサンドすること)は諦めてください。ちょっと重すぎます…

その他

ピアノメーカーで1番大きいピアノを作っているのが、このベーゼンドルファーです。1番大きいピアノで280cmもあります。また、ピアノの内部の鉄骨も、大変たくましく作られていて、かっこいいピアノとなっています。

ベヒシュタイン(Bechstein)

1960年のショパン国際ピアノコンクールで優勝したマルタ・アルゲリッチが使用したのがこのベヒシュタインです。

音色

非常にブリリアントな響きがします。しかし音波のような煌びやかな音なので、聴いていて苦になりません。柔らかな音を出すことも容易なので、音色の点では扱いやすいピアノです。

タッチ

かなり軽いと思います。それは紙のような鍵盤に感じるほど軽く、もはや羽のようです。あまりガシガシ弾くことができないので、特定のピアニズムに合うように設計されたのでしょうか。

しかし、このベヒシュタインのタッチは繊細で、扱える修理技師が少なく管理が疎かになりがちです。タッチが不揃いになって、弾きにくくなってしまうのもベヒシュタインの特徴です。

その他

スタインウェイとは逆に、ベヒシュタインは張力が高いです。その分切れやすいのかは分かりませんが、音色を調節しやすいのは確かです。

このベヒシュタインは日本ではあまり普及せず、置いてあるホールはそんなにありません。また修理できる人も少ないので、きちんと整調されたベヒシュタインを弾ける場所は限られています。

まとめ

YAMAHA、KAWAI、スタインウェイ&サンズ、ベーゼンドルファー、ベヒシュタインのピアノは様々な特徴があり、弦の張力から大きさ、音色まで全く違うことが分かりました。これらのピアノは最低2000万円必要なので、頑張ってお金をためてくださいね。

リンク

合わせて読みたい

コメント

  1. かとー より:

    大変わかりやすい記事ありがとうございます。
    各社さんいろいろ工夫されていますよね。私もベヒシュタインのピアノを買ってからしばらくたちますが、本当に刻々とコンディションが変わってそれがなんとも愛らしく、手段としてのピアノから大きく見方が変わりました。周知のとおり、設計、調整、個体差、環境、奏法、イメージによって大きくかわるこの不思議な相棒とこれからも長く付き合っていきたいと思います。

タイトルとURLをコピーしました