みんなが使う「原典版」って何?原典版以外の版は何?

練習法
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どうも、音大生のこうきです。今回はよく先生に言われる「原典版を使いなさい」の「原典版」を解説したいと思います。原典版とは一体何か、そして原典版以外の版を何と言うか、知っていますか?

原典版とは?

自筆譜に忠実に再現された楽譜

原典版とは、その作曲家の自筆譜を忠実に再現した楽譜のことをいいます。基本的には間違った音もそのまま書かれます。自筆譜にあることは全て書かれるのが原典版の特徴です。

逆に原典版は自筆譜の間違いを訂正しない場合があるので、よく考えて譜読みをしなくてはなりません。作曲者の間違いも、意外と多いのですよ(誤植と呼ばれます)。

原典版を使うメリットとデメリット

こうみるとえらい違いでしょ

メリット

原典版を使うと作曲者が書いた音のみが書かれるので、作曲者の意図を正確に読み取ることができます。また自筆譜がめちゃくちゃ汚い作曲者もいるので、読みやすく整理されています(Beethovenのこと)。

大抵の原典版には「校訂報告」という、自筆譜の間違いはここで、この版では直しましたという報告や、ここは自筆譜がめちゃくちゃで微妙です、などといった報告が全てきっちり書かれています(Beethovenはちゃんと自筆譜のファクシミリまで載ってるのに自分も解読不明)。

作曲家によってはペダル記号や指遣い、また細かい演奏指示まで書かれているので、大変重宝する版です。

デメリット

原典版は自筆譜に忠実に書かれているため、そのほかの情報が一切入りません。つまり、自力で楽譜を解読する必要があります。

後述する「実用版」は、当時の演奏慣習が反映され、必要に応じて強弱記号やアーティキュレーション、または音が書かれています。なので、そういった当時の演奏慣習に対する知識がないと、原典版では演奏できないのです。

実用版とは?

必要な記号が追加してある編集された楽譜

実用版は原典版とは違い、自筆譜以外の当時の演奏慣習に合わせた記号が追加された版のことをいいます。ソナチネアルバムやソナタアルバムは、その実用版です。たしかに、妙にスラーやスタッカート、強弱の指示が多いと思いませんか?

全音などが初学者向けに作っている楽譜

実用版は初学者向けに作られている楽譜です。初学者が「バッハの8分音符は当時のチェンバロで演奏すると切れて聞こえるからノンレガート気味に弾かなきゃ」などと考えられるでしょうか?

またバロック〜古典派の時代にかけての装飾音符は、初学者でなくとも音大生、さらには先生も実用版(厳密には批判校訂版や演奏家版)を確認するのです。

実用版のメリットとデメリット

メリット

実用版のメリットはやはり当時の演奏慣習が分からなくても弾けることです。逆に言えば当時の演奏慣習を学習することができる便利な版でもあります。バロック〜古典派の時代はインクと紙が貴重だったため「このくらいわかるでしょ」と作曲者が思うと書かなかったのです。

ちなみに厳密に書かれるようになったのは、さらに印刷技術が発展したラヴェルやドビュッシーの19世紀後半からです。このくらいになると、楽譜に書いてあることを忠実に守ればその通りの演奏に仕上げることができるようになります。

デメリット

実用版は原典版とは違い、何も考えなくとも楽譜に沿って弾くだけでそれっぽく演奏できてしまいます。つまり、当時の演奏慣習を反映した演奏だと分からずに演奏してしまうことになってしまうのです。

本来、J.S.バッハの楽譜にはスラーやスタッカート、ましてや強弱記号はほとんど書かれていませんでした(全くなかったわけではない)。しかし、実用版はスラーなどのアーティキュレーションが書かれているので、J.S.バッハはこんなアーティキュレーションを書いたのだと間違った解釈をしてしまう可能性もあります。

実用版の最大の問題は編者がはっきりしないことです。原典版のような校訂報告がない実用版は多く、編者の名前も分からない場合が多いのです。

原典版と実用版の使い方

必ず2つを見比べること

原典版にも実用版にもメリットとデメリットは存在します。なので、両者を見比べて比較することが必要となります。

この記号は作曲者が書いた記号か、編者が書いた記号か。このスラーのかけ方は編者が修正したのか、それとも作曲者が本当に書いたスラーか。また原典版で明らかな変な音が見つかった場合、実用版では必ず直してあるので確認することができます。

原典版では全く指遣いが書かれていない(そもそも作曲者が書かない)ことがほとんどなので、実用版の指遣いを確認することも、早く演奏を組み立てることには必要なことです。

あまりマイナーな曲になると原典版しか発売されていない場合があります。しかしそれに関しては、今まで培った演奏慣習に対する知識で、自分で読み解くことができるはずです。

自分の演奏を確立するためには「自分版」の作成が1番良いのですが、それについてはまた今度。

おまけ

コルトー版

コルトー版とはピアニストのアルフレッド・コルトーが編集した版です。特に練習法や指遣いが充実しており、演奏困難な作品やショパンエチュードでは重宝します。

また彼の書いたピアノメトードについての本もありますので、それを参照するとコルトー版のより深い理解に繋がると思います。

エキエル版

ショパンの音楽学者、ヤン・エキエルが編集した版で、ショパンの全作品の版が存在します。ショパン国際コンクールではこの版を使うことが推奨され、今ではショパンはこの版を使うことが規範となっています。

しかし、ショパンに関しては様々な版が乱立しています。なぜなら彼はイギリス、フランス、ドイツの3カ国同時出版という恐ろしいことをしたがために、自筆譜や出版社の編集者の版がごっちゃごちゃになったのです。

エキエル版には明らかに変な音があるので、パデレフスキ版やコルトー版との併用をお勧めします。

ペライア版

ピアニスト、マレイ・ペライアが現在進行形で校訂している版があります。ヘンレ社のベートーヴェンのピアノソナタの指遣いです。

ヘンレのベートーヴェンのソナタと言えばあの2冊の分厚い本が有名ですが、実は最終校訂が1976年とたいへん古いのです。それ以降の研究により新しい発見がありましたが、この版には反映されていません。

それを見かねたヘンレ社は新しい版を作ると同時に、ペライアに運指の校訂を依頼しました。そこで誕生したのがペライア版です。

まだ32曲の出版はされていませんが、少しずつ充実してきていますので、運指に困ったら参考にしてみてください。

アムラン版

ピアニストのマルク=アンドレ・アムランが運指を校訂した版があります。ヘンレ社から発売されたラフマニノフの楽譜です。ラフマニノフは左利きだった説があり、また手が異常に大きく、演奏困難な楽曲が並びます。

そんな中で登場したアムラン版。アムランはショパン=ゴドフスキーのエチュード53作品をすべて弾き録音するという鬼才で、アムランに弾けない曲は誰にも弾けません。そんなアムラン版の運指はいかに…

まとめ

原典版と実用版には長所と短所があり、それらを相互的に使うことで演奏を効率よく、正しく組み立てられることが分かりました。原典版で作曲者の自筆譜を確認し、当時の演奏慣習を学ぶために実用版を手元に置いておくことを忘れないようにしてくださいね。

またエキエル版やペライア版など、音楽学者やピアニスト(演奏家)の版があることも分かりました。特に演奏家版の運指は参考になるので、1度手に取ってチェックしてみてくださいね。

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