タッチの種類は音色のパレット「ピアノのタッチの2つの原則」

タッチの種類は音色のパレット「ピアノのタッチの2つの原則」 演奏法
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どうも、 ピアノ部部長、 音大生のこうきです。みなさんはピアノのタッチをいくつ持っていますか?ピアノのタッチの種類は音色のパレットのようなものです。様々なタッチの方法がありますが、今回はタッチにまつわる大きな原則である「上部雑音」と「下部雑音」について書いていきます。

タッチの種類は音色のパレット「ピアノのタッチの2つの原則」

目次

ピアノのタッチの方法

上部雑音と下部雑音とは?

ロシアのピアニストTatiana Nikolayeva(タチアナ・ニコラーエワ)の演奏
音のパレットが非常に豊かで芯のある音がしますね

上部雑音

上部雑音とは、指が鍵盤に当たる際の音のことです。少し文字では分かりにくいので、ツイッターに動画をあげておきますね。

この上部雑音はあまりいい結果をもたらしません。この音は鍵盤を叩いているように聞こえますし、鳴らすメリットがありません。上部雑音については知っておくだけで良いでしょう。

下部雑音

下部雑音とは、鍵盤が鍵盤の底に付いた際の「コツン」という音です。この音はソフトペダルを踏んで高音部を弾くとよく分かります。「コツン」という木と木がぶつかる衝突音がするはずです。

この音はピアノを演奏する際に使える音です。ホールに響かせるためにはこの「コツン」という音が元になり、綺麗な音を響かせます。「雑音?」と思う方もいるかもしれませんが、ピアノの音色を変えるためには必要な要素なのです。

上部雑音のタッチ

ツイッターの動画を見ていただくと分かるのですが、このように鍵盤の上から叩くと、上部雑音は鳴ります。これはハイフィンガーという奏法をする人になりがちで、どうしてもパタパタ音がしてしまいます。

対処法としては鍵盤の表面を感じるのをやめ、鍵盤が降りる感覚にフォーカスすることだと思います。上部雑音が鳴る奏法は、体にも音楽にもよくありません。

下部雑音のタッチ

下部雑音のタッチは指先を固くし、鍵盤の底に落とすつもりで弾くことです。これは支えが必要なタッチなので難しいのですが、支えの感覚がある人であればすぐにマスターすることができます。

力が入っている感覚がある人がほとんどだと思いますが、この支えはピアノを弾く上で大切な要素なのです。私たちが立つとき、無意識に体幹が体を支え、首が頭を支えています。このように、ピアノを弾く際も指、手、腕などを支えることは必須だと、かのリヒテルの師、ゲインリヒ・ネイガウスは言っています。

下部雑音が鳴るタッチとは?

鍵盤の底まで押すタッチ

下部雑音を鳴らすには鍵盤の底までタッチすることが必須です。たとえピアノ(音量)でも、鍵盤の底までタッチすることは可能で、ピアノでも下部雑音を鳴らすことは可能なのです。

下部雑音に慣れるとその虜になってしまい、ただ硬いピアノになってしまうことがあるので、下部雑音はあくまでバロメーターを意識して使って下さい。ON OFFの認識では音色は作り出せません。

下部雑音が鳴らないタッチとは?

マルタ・アルゲリッチは下部雑音こそが彼女の特徴という感じですね

鍵盤の下まで押さないタッチ

下部雑音が鳴らないタッチとは、鍵盤の底まで押さないタッチです。ピアノは、鍵盤の底まで押さなくても音ができるように、深さ8㎜のあたりでハンマーが弦に当たるように作られているのです。

ですから、少し浮き気味に、鍵盤の底ではなく8㎜前後を狙うつもりで弾くと下部雑音は鳴らず、ピアノの弦のみの音色を出すことができます。

下部雑音は必要か否か?


下部雑音については議論が白熱しており、下部雑音肯定派と否定派に分かれます。

下部雑音肯定派の意見

  • この音がないとホールで響かない
  • チェンバロの音色だって下部雑音によって決定されていた
  • 下部雑音は勝手に鳴ってしまうものである

たしかに下部雑音があると芯のある音に聞こえ、ホールに響く気がします。また下部雑音は木と木がぶつかる音なので、いくら8㎜前後で止めても慣性の法則でぶつかってしまうような気がします。

下部雑音否定派の意見

  • 下部雑音は硬い
  • 関節に負担をかけてしまう
  • 下部雑音が鳴らなくても美しい響きは出せる

なるほど、下部雑音の「コツン」という音はたしかに固く、ピアノの音色としてはふさわしくないように聞こえる気がします。また下部雑音を出すための支えが関節に負担をかけることもよく分かります。

超個人的な意見

自分は下部雑音を肯定も否定もしません。なぜなら下部雑音は使ったり使わなかったりすることができるからです。

例えばショパンのノクターンであまり下部雑音を鳴らすとキンキンして、チェレスタで弾いているのか!という感じに聞こえてしまいます。

しかしラフマニノフのピアノソナタ第2番Op.36の冒頭を、下部雑音無しになよなよ弾いてしまっては締まりがなく、大ソナタの幕開けにふさわしくありません。

大事なのは様々な要素を統合することです。1つの方法に固執することは1つの表現しかできないということで、全く現実性がありません。綺麗な場面ではあるけれど何となく寂しい感じがする、パワフルで激情的な場面だけど怒っているのではなく取り乱しているように聞こえる、などの表現が必要なのです。

まとめ

上部雑音は使わないほうがいいでしょう。あまりいい響きはしません。下部雑音は適材適所に、臨機応変に用いると大変美しい響きがします。

また下部雑音を鳴らさないタッチは感覚をつかみにくく、フォルテで弾けないことが良くあるので、鍵盤の深さ8㎜を狙ってもフォルテが出るタッチを探してみて下さいね。

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